争族(そうぞく)を避けるために。一般家庭でも必要な相続税対策の基本

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「うちは普通のサラリーマン家庭だから、相続税なんて関係ない」。
そう思っている人は少なくありません。

「分けるほどの財産もないし、兄弟で揉めることもないはず」。
こういう声もよく聞きます。

でも、現実は少し違います。

日本の家庭裁判所で扱われる遺産分割のトラブル。その約75%は遺産総額5,000万円以下のケースです。いわゆる資産家ではなく、ごく普通の家庭。むしろそちらのほうが圧倒的に多い。

つまり、相続問題は「お金持ちだけの話」ではありません。
準備がないまま相続が始まると、家族関係は簡単に崩れます。昨日まで普通に会話していた兄弟が、数か月後には口もきかない。そんなケースは珍しくないのです。

ここでは 2026年時点の制度を前提に、一般家庭でも知っておくべき相続税対策の基本を整理します。難しい専門用語はできるだけ避けながら、実際に役立つポイントに絞って解説していきます。


都内に家があるだけで課税対象になる時代

なぜ今、普通の家庭でも相続税が問題になるのでしょうか。

大きな理由は二つあります。
一つは 2015年の税制改正
もう一つは 都市部の不動産価格の上昇です。

まず押さえておきたいのが、相続税の基礎控除。

計算式はこうなっています。

3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば子どもが2人の場合。基礎控除は 4,200万円です。

「それなら大丈夫」と思うかもしれません。
ところが東京や首都圏では事情が変わります。

戸建てでもマンションでも、土地の評価額だけでこのラインを超えるケースが普通にあります。現金はあまり残っていないのに、不動産の評価額だけが高い。実際、多くの家庭がこのパターンです。

問題はここからです。

相続税は 原則として現金で納税しなければなりません。
家はある。でも現金がない。

結果どうなるか。
自宅を売って税金を払う、という事態に追い込まれるケースが出てきます。


早めに動く人だけが使える節税の基本

相続対策は、亡くなってからではほとんど選択肢がありません。
できることは限られています。

逆に言えば、親が元気なうちなら手段はいくつもある
ここでは代表的な方法を二つ紹介します。

生前贈与(暦年贈与)

最も知られている方法です。

年間 110万円までの贈与なら、贈与税はかかりません。
これを毎年続けると、将来の相続財産を少しずつ減らすことができます。

たとえば子ども2人に毎年贈与すると、

110万円 × 2人 × 10年
それだけで 2,200万円の資産を移転できます。

ただし注意点があります。

2024年の税制改正で、死亡前7年以内の贈与は相続財産に加算されるルールに変わりました。以前は3年でしたが、大きく延びています。

つまり、相続直前に慌てて贈与しても意味が薄い。
対策は できるだけ早く始めることが重要です。


生命保険の非課税枠を使う

もう一つ、実務でよく使われるのが生命保険です。

死亡保険金には次の非課税枠があります。

500万円 × 法定相続人の数

相続人が3人なら、
1,500万円まで非課税です。

この仕組みには大きなメリットがあります。

まず、現金で受け取れること。
そして、受取人を指定できること。

相続では「不動産はあるけれど現金が足りない」という問題がよく起きます。生命保険は、その不足分を補う手段として非常に使いやすい。

納税資金の確保。
あるいは特定の子どもへの資金調整。

設計次第で、相続トラブルの火種をかなり減らすことができます。


実際に起きた「争族」の典型例

ここで一つ、よくあるケースを紹介します。

都内に実家があり、評価額は 3,500万円。預金は 1,000万円
相続人は兄と弟の2人です。父親が亡くなり、相続の話し合いが始まりました。

兄曰く
「この家に住み続けたい」

弟はこう主張します。
「法定相続分は半分。きちんと現金で欲しい」

計算すると、遺産総額は 4,500万円。弟の取り分は 2,250万円です。
預金は1,000万円しかありません。
それを全部渡しても、まだ 1,250万円不足します。

兄が自分の貯金で払えれば話は終わりますが、しかし現実には難しいです。
結局どうなったか。

実家を売却して現金を作るしかありませんでした。

家はなくなり、兄は住む場所を失いました。
そして兄弟関係も完全に壊れました。

ここで問題だったのは、相続の金額ではありません。
事前の話し合いがなかったことです。
たとえば、
「家は兄が相続する」
「弟には生命保険で現金を渡す」

こうした出口を先に決めていれば、結果はまったく違ったはずです。


相続でよくある質問

親が認知症になってからでも対策できる?

正直に言うと、かなり難しくなります。

判断能力が失われると、
・遺言書の作成
・贈与
・不動産の売却

こうした手続きが 法的にできなくなる可能性があります。

いわゆる「資産凍結」です。

だから専門家は口をそろえて言います。
対策は元気なうちに、これが絶対条件です。


タンス預金は税務署にバレない?

残念ながら、その考えはかなり危険です。

税務署は、相続調査の際に 家族の銀行口座の動きを細かく確認します。
過去10年以上さかのぼることも珍しくありません。

不自然な現金引き出しがあれば、すぐにチェックされます。
もし隠蔽と判断されれば、重加算税などのペナルティが科されます。

リスクを考えると、正攻法で対策したほうが圧倒的に安全です。


相続対策は、家族への最後の配慮

相続は単なる財産分配ではありません。

残された家族が、
これからも普通に付き合っていけるかどうか。

そこに直結する問題です。

だからこそ、早めに話しておく価値があります。

難しいことから始める必要はありません。
まずは帰省のタイミングでもいい。

「将来どうする?」
そんな一言からで十分です。

エンディングノートを書く。
専門家に一度相談してみる。

それだけでも、家族の安心感は大きく変わります。

相続対策は早すぎることがありません。
むしろ、早い人ほど選択肢が増える。

そして結果的に、家族を守ることにつながります。

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